名古屋大学 大学院工学研究科 生命分子工学専攻 生命システム工学講座

名古屋大学 堀研究室

Graduate School of Engineering Department of Biomolecular Engineering

界面微生物工学

概要

微生物を含む全ての細胞表層には、細胞外との物質や情報の交換、界面や他の細胞との相互作用などを担う蛋白質や多糖類など、様々な機能性生体高分子が局在しています。すなわち、細胞表層は機能性生体高分子のプラットフォームです。主要な細胞成分を含む細胞質は脂質二重膜から成る細胞膜で覆われていますが、多くの微生物細胞は、その外側に細胞の機械的強度を保つ細胞壁を有しています。細菌(バクテリア)の場合は、細胞表層構造の違いにより、グラム陽性細菌とグラム陰性細菌に分けることができます。前者の細胞膜は、ペプチドグリカンと呼ばれる多糖類を主成分とする厚い細胞壁で覆われています。後者は、細胞膜の外側に外膜と呼ばれるもう一枚別の脂質二重膜をもち、細胞膜(内膜)と外膜の間はペリプラズムと呼ばれ、薄いペプチドグリカン層がここに存在します。研究や産業上最も重要な細菌である大腸菌はグラム陰性細菌、枯草菌はグラム陽性細菌です。

 

微生物は、多種多様の酵素を細胞内に含むとともに、細胞外にも分泌します。これら酵素は、発酵食品、医薬品、化成品、バイオ燃料などの生産、さらには、廃水処理や脱臭、バイオレメディエーションなど環境分野で利用されています。また、廃水処理などにおいては、微生物細胞が汚れの成分である有機物等を取り込み、異化代謝により無機化することを利用しています。いずれにせよ、酵素や基質の膜輸送が一連の微生物反応における重要なステップとなっています。また、環境中の微生物は固体表面に付着し、バイオフィルム(後述)と呼ばれる複合微生物コミュニティを形成する傾向があります。その中で微生物細胞は互いに物質や情報のやり取りをしながら生育しており、ここでも微生物細胞の表層は、付着や細胞凝集、物質・情報交換において重要な役割を担っています。

 

当研究室では、“微生物”、“細胞表層”、“界面”をキーワードに、構造や機能、相互作用などについての基礎的研究を進め、これを土台に、グリーン・イノベーションにつながる新しい方法論、技術の構築を図る『界面微生物工学』の創生を目指しています。微生物細胞の表層構造と機能を分子レベルで解明し、それに基づき細胞表層を改変、設計することで、微生物の固定化や細胞表層提示、物質変換速度の制御など、新技術の開発に取り組んでいます。また、微生物細胞や細胞表層構造と界面との相互作用を解析し、微生物付着やバイオフィルム形成の制御技術の開発を目指すと同時に、廃水処理などへのバイオフィルム利用技術の開発も手掛けています。

これまでの成果概略

排ガス処理装置より得られたトルエン分解細菌Acinetobacter sp. Tol 5は、驚異的な付着性を有しており、サンプリングするだけでピペットやプラスチックチューブの内壁を細胞がコーティングしてしまうほどです。また、細胞自己凝集性を示します。Tol 5の細胞懸濁液にポリウレタン製スポンジを投入すると、1分ほどの接触時間でほとんどすべての細胞がポリウレタン繊維の表面に細胞凝集塊を形成して付着します(図1)。この高い付着性は、細胞表層を覆 う繊維状構造によるものです(図2)。これらを総称してバクテリオナノファイバーと呼ぶことにしました。現在までのところ、Tol 5は少なくとも3種類の周毛性ナノファイバーを有することが明らかとなっており、それらは蛋白質でできています。微生物細胞は優れた生体触媒です。様々な有用化学品やバイオ燃料の生産に利用可能であり、グリーン・テクノロジーの切り札として考えられてきました。しかし、コストや安定したプロセスの実現という意味で困難な部分も多く、実用化は限定的でした。堀教授は、バクテリオナノファイバーを利用する画期的な微生物固定化技術の開発に成功しました。これによって、高価な微生物触媒の連続使用や反復使用が可能になり、またバイオプロセスの操作性、利便性、安定性が飛躍的に向上します。

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